一葉「よもぎふ日記」8
十六日 早朝、広瀬七重郎帰県。 吉田ぬしのもとへ返し出す。「うきふしも かなしきふしももらし 給ふにつけて、 少しはみ心なぐさなべきに、 折々は聞えおどろかし給へ」とて、
一0」もら どりいざ&らばとも音になかん友千鳥
ま さ 1」ぢふみだにかよへうらの真沙路
かきやるま&にいと哀(あはれ)也。
野尻理作の同棲
広瀬よりの便りに聞けば、「野尻ぬし、妻む かえ給へり」となん。国子の心をおもひやるに、我も も
の悲しさ堪がたし。 さ &やかなる紙に小さく書きて見するをみれば、
いにしへにためしも有(あり)とあきらめて
夢のうきょをうらみしもせじ
いと哀(あはれ)なるま&に
身にちかくためしも有(ある)をくれ竹の
うきよとはしもうらむなよ君
又国子かく
我が心しるべき君のなかりせば
うきょを捨つるすみ染(ぞめ)の杣(そで)
我うち笑ひて
こ つ・・し ある心から衣のうらの玉も有をすみ染(そめ)とまで何おもふらん
夜ふくるまで国子ねむりもやらぬに
いでや君などさは寐ぬそぬば玉の
よは夢そかしょは夢そかし
現代語訳
十六日。早朝広瀬七重郎氏帰県。吉田かとり子さん
へ返事を出す。
「つらい事も悲しいこともお話し下されば、 少し
お心も慰まれるでしようから、 折々はお訪ね下さい
と書いて、
いざさらばとも音になかん友千鳥ふみだにかようらの真砂路
書いているうちに心が痛むのでした。
は
ま
へ
広瀬氏からの手紙によれば、 野尻理作氏が奥様を迎えたとか。邦子の心を思うと私も悲しくてたまらない。
邦子が紙切れに小さく書いてみせてくれた歌いにしへにためしもありとあきらめて夢のうきょをうらみしもせじ
可哀相に思ったので
身(3)に近くためしもあるをくれ竹のうき世とはしもうらむなよ君
また邦子が
我が心しるべき君のなかりせばうき世を捨つる墨染の袖
私は笑って
心から衣のうらの玉もあるを墨染とまで何おもふらん
夜更くるまで邦子が眠りかねているので
いでや君などさは寝ぬぞぬば玉のよは夢ぞかしょは夢ぞかし
ながむれば恋しき人の恋しきにくもらばくもれ秋
のよの月
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